断食は何故 体に良いのか?

 

 私は年に3回断食に出かける。67日の短い断食だが、それでも効果がある。全国の断食道場をぐるぐる回っている。1か所に固定しない理由は、断食道場でもそれぞれの特徴があり主義主張が異なる。

 

 それが断食をする私にとっては、とても勉強になり、いつも新しい発見が出来て面白い。また、その土地の風景や立地条件により、変化した観光気分も味わえる。断食に来ている人との交流も愉快だ。

 

 断食はつらい修行だと思われる人がいると思うが、そんなに苦しいものでは無い。慣れてしまえば普通の生活と何ら変わらないのである。減食期間、断食期間、副食期間、に分類されている。

 

 私の場合は最初の2日間は減食期間で、朝昼晩の食事が出る。ただ、食事の量は普通の食事の5分の1くらいの量だ。次に断食期間が2日間ある。この時だけは朝から晩まで何も出ない。

 

 ただ、断食道場によってそれぞれ違うが、野菜ジュースを出す所、酵素飲料を提供する所、梅醤番茶を自由に飲める所、など色々あるから、それに合わせて飲んでも良いのである。

 

 あまり厳しい断食をさせても万一のことがあれば責任があるので、断食期間中であっても、その人によっては緩やかな配慮がなされている。私は81歳であるから、万一のことがあっては他人に迷惑が掛かる。

 

 そこで、味噌と梅干、チョコレートを携帯して臨んでいる。断食期間中には朝は味噌スープを1杯飲む。昼は熱いお湯に梅干しを1個溶かして飲む。晩も味噌スープを1杯飲んでいる。その他、水は自由に飲んでいる。チョコレートはめまいがしたり、なんかあった時の非常用だ。

 

 断食が苦しくないわけは、腹が減ると空腹感は当然襲ってくる。ところがその空腹感はほんの1時間ほどで解消する。それは体の中で糖分が減ると、脳が我慢が出来なくなる。

 

 そこで今まで体内に蓄えていた脂肪を燃焼させるのだ。そうなると空腹感はすっかり解消する。特に太っている人の場合は、燃焼する脂肪が沢山ある為、誰に聞いても別に苦しいことは無い、普通ですよとすました顔で返事する。

 

 信貴山断食道場で会った140キロの巨体のAさんは40日間の断食生活でもなんの苦しみもないと平気で話していた。帰りには20キロの減量に成功して帰って行った。今まで蓄えていた脂肪やコレステロールなど不要なものが燃焼されるのである。

 

 血管壁の垢、動脈硬化、脂肪肝の脂肪、腹回りの脂肪、動脈瘤、など病気の原因となるものはすべて体にとって不必要なものだ。その不必要なものが燃焼の対象となる。

 

 ここが断食の良い所だ。今までの生活で誰でも、不必要な物質をたくさん背負い込んでいる。この不必要な物質を隅から隅まで掃除してくれるのが断食であると私は思っている。いわば体の中の大掃除をしてくれるのだ。

 

1週間の断食、2週間の断食、1か月の断食、聞いただけでそんなに長い期間何も食べないで過ごすことが信じられないという人が多い。しかし、前にも書いたように減食期間、断食期間、復食期間、に分けられ純粋な断食期間は3分の1しかない。

 

 そのうえ前にも書いたように、脂肪の燃焼が始まるので飢餓感はほとんどないのが普通である。ましてや小太りの人にとっては快適な時間帯となる。断食をやる前から敬遠するよりは、やってみて自分の体で体験してみるとよく分かる。断食が難行苦行ではないと、はっきり断言できる。

 

 脂肪太り、糖尿病、高血圧、うつ病、心臓病、不眠症、不妊症、月経不順、更年期障害などすべての病に驚くほどの効果がある。脂肪太りや糖尿病系になりかけると、気分の落ち込み、うつ傾向、不安感、睡眠障害など精神的な病が起きやすくなる。

 

 このような症状を感じたら、自分の体の中に不純物がたまり始めている証拠と考えて間違いない。日々の生活の中で美味しい物を自由に食べている関係で腸の中にはヘドロとごみが蓄積し始めている。悪玉菌も多くなっているはずだ。

 

 まだ、深刻な病気という段階ではないが、この時期に手を打っておく必要がある。医者や薬でその場しのぎをしていると、ある日の健康診断で突然、あなたは癌にかかっています。すぐに手術してくださいと言われることがあるかもしれない。何しろ3人に1人は癌になる時代である。腸の中が、健康で善玉菌が多く優秀な栄養が吸収されている人の場合は、必ず安定した眠りや朗らかな気分で人間関係を楽しむことが出来ている。

 

 断食というのは一定期間、食物を食べ無い修行である。その為、復食が終わり、無事解放された時の喜び、食物に感謝する心、どんな食物もこんなに美味しい物かと感激する。

 

 今まで無造作に捨てていた食物、食べたくもないのに時間が来たから、食べていた食事、美味しい物ばかり選り好みして食べていた自分、過食と分かっていてもついつい食べ過ぎてしまう。

 

 断食を経験して帰ると、このような無駄な食生活を心から反省させられる。食物に対して感謝と、自分の体も精神も養ってくれる有り難い食べ物だという念が起きて来る。

 

 断食が良いと言っても、素人が単独で無造作に行うのは危険がある。しっかりした、減食期間、断食期間、復食期間、がとても大切だ。しかも人によっては断食中に嘔吐、めまい、気分の悪さ、などが出る人もある。

 

 出来ることなら断食道場へ行って正式な断食を経験した方が良い。そこで断食の体に与える影響、長年苦しんだ疾病が簡単に治った喜び、断食仲間の不思議な体験談など新しい断食の知識が得られる。

 

 断食は神様が我々に与えてくれた素晴らしい自然治癒能力である。すべての慢性疾患、ケガ、事故、自然界の細菌による疾病、などに対して根本から解決してくれる。手術、薬、放射線、など身体を攻撃する医学とは根本から違う。

 

 身体を攻撃するという点からは、断食も食生活でひもじい思いをする。しかし、これは手術、薬などと違い、全く副作用がない。そればかりか断食後の体調の回復ぶりは目を見張るものがある。

 

 それもそのはずだ、身体の根底から大掃除して、今まで貯めていた不純物をすべて捨て去ってくれる。細胞の若返り、免疫細胞の増加、血流の改善、内臓の強化、精神的に朗らかになる、など良いことづくめだ

 

 さて、ここで25歳男性のどうにもならない病状を紹介する。彼は自分の健康のため、肉、卵、牛乳、魚、ハム、ベーコンなどたんぱく質の多い、栄養分豊富な食品を大量に食べていた。それが体にとって良いと自己判断して食べていたのだ。

 

 ところがどうした訳か胸焼け、げっぷ、胃もたれ、消化不良などに悩まされた。薬を飲み、お医者さんの言いつけどうりの生活をしたが一向に治らない。その当時の病状は次のようであった。

 

 ちょっと変わったものを食べれば、胃の中で停滞して発酵し、食べた物が胃部に停まって重苦しく、時々胸焼けがして胃の中が空にならず、ポチャポチャト音がした。また、アクビが出て酸っぱいガスや,臭いガスも出て前日食べた物を吐くこともあった。

 

こうなってくると胃は無能無力となり、何をする勇気も出ません。無理に運動や冷水摩擦などをして鍛えようとしたのですが、かえって体重減少、めまい、頭が重く、便は秘結して硬くなり、口が渇いて水を飲むとまた胃部が重苦しく、夜も眠ることが出来ず、ついにうつ病となりました。

 

 この人は断食に挑戦して、1週間の減食期間、本断食3週間、復食期間60日を続け理想の健康体に戻ったのでした。25歳という若さですから、このような長期の断食に耐えられたのです。

 

 食物を食べることは人生の楽しみの一つである。しかし考えねばならぬ事は重荷でもあるという事である。食べ過ぎ、栄養の偏り、食品添加物、飲み過ぎ、腐敗、細菌、などあらゆる重荷が充満している。

 

 特に食の楽しみを満喫する為、食べ過ぎという重荷が毎日のように我々の背中に乗ってくる。仕事の場合は休息や睡眠でバランスをとるが、食生活の場合は休む暇のない長期間の労働となる。

 

 これを解消すべく、11食主義、12食主義、でバランスを取っている人もいる。普通は13食が当たり前でその為、背中の重荷を我慢できずマッサージに通う人も多い。この重荷がドンドン重なると慢性病へと発展する。

 

 動物は冬眠という手段で冬場を乗り切り、バランスを取っている。これらのことを考える時、断食は積もり積もった人間の重荷を解消する有効な手段となる。今まで背負い込んできた重荷をすっかり下すチャンスと考えてほしい。

 

 断食の効果は精神面で大いに効果を発揮する。断食に来ている人と話していると、多くの人にうつ傾向があり、小心、劣等感、ノイローゼ、道を歩いていても人の顔を見れないほどの対人恐怖症などがあった。

 

 これらの人達が断食を終えて帰るころには、すべての人が朗らかになり、自分のうつ症状がどこに行ったのか探したいくらいだと言っている。断食の効果は決して肉体の改造だけでなく精神面でも、また限りなく有効であることを悟ることが出来きるのだ。