ゲルソンの癌治療法

 マックス、ゲルソン、1881年ドイツ生まれ。1959年まで医師として末期癌患者さんの治療に当たった。最初は一般の医師と同様に手術、抗癌剤治療をしていたが、これは違うと気付き、食生活に治療法を変え成功した医師である。

 

 大学病院や普通の病院で治療をした末期癌で、もう完全にダメだという患者さんをゲルソンは引き受けている。多くの患者さんを死亡させているが、生還している率も多い。そこには臨床医ならではの創意,工夫が読み取れる。

 

 現代の食生活に、多くの活路を開く元になる研究をしている。彼の偉大な所は、詳細な初期のレントゲン写真を初めとして、確実な末期癌であることを証明したうえで治療を行い、しかも20年~30年に渡って追跡調査をしている事だ。

 

 自分の死後は、弟子が追跡調査をしている。現代の5年間生存率で完治と考えているのとは訳が違う。ゲルソンの考え方や治療法は現在、末期癌で苦しんでいる人達の参考になるに違いないと思い書き出すことにした。

 

 ゲルソンの食事療法は末期癌でやって来た患者さんに対して、最初の3か月間は大量の野菜ジュース、果物ジュース、オートミールだけを取らせている。

3カ月を過ぎると、ポットチーズ、スキムミルクで造ったヨーグルト、バターミルク、という形で動物性たんぱく質も加えている。

 

 最初の3カ月で禁ずるものとして、ミルク、チーズ、バター、肉、魚、卵を禁じている。末期癌患者さんの多くは非常に臭いオナラをする。これは腸内細菌が腐敗を起こしその毒素が吸収され、肝臓および消化器官に多大な悪影響を与えていると考えた。

 

 この時期に動物性タンパク質を食べるとますます腐敗が進み、身体に悪影響を与える。この時期は動物性のタンパクは極力制限した。この治療の目的は身体の組織からナトリウムを可能な限り追い出し,代わってカリウムが可能な限り組織に行き渡るという原理にもとづいている。

 

 次にゲルソンが重要な治療法に据えているのが浣腸である。末期癌患者さんには身体に毒素が充満していることは分かっていた。しかし、それは肝臓の解毒能力が低下しているからだと考えていた。

 

 だが、次々に毒素が体内に充満してゆくことを不審に思った。何が毒素を造りだしているのか。そこで目を付けたのが腸内環境の悪化により、腸内細菌による腐敗菌の増産である。

 

 元々、腸内細菌は取り入れた食物を分解して、良い栄養を吸収する所である。その腸の中が腐敗菌に犯され毒素が生産されていると考えた。その対策として考えたのが浣腸である。

 

 ゲルソンは次のようなことを言っている。私は何人かの癌患者さんを肝性昏睡の末に死なせた。この死はジュースや浣腸などで有害な物質を頻繁に、かつコンスタントに体外に排出させることが、どれほど大切かを私自身が知らなかったゆえに浣腸を怠ったせいだった。

 

 患者さんによっては治療開始の日には2時間おき、否もっと頻繁にコーヒー浣腸をする場合もあった。身体から有害物質を追い出し。身体を解毒することは最大の重要事で、特に初期の治療には大切である。

 

 コーヒー浣腸を4時間に1回ずつやらせる。また、酷い痛み、吐き気、神経の緊張、ふさぎなどのある患者にはもっとやるようにしている。それでも解毒できない場合は、ひまし油を大匙2杯飲ませ下痢させた後で、ブラックコーヒーを飲ませた。これはひまし油の残りを取り除くのが目的であった。

 

 最も効果的な浣腸をするには、右わき腹を下にして寝て、両脚は曲げて腹に寄せ、浣腸液をうんと、大腸全体に吸い込むために、深く呼吸するようにする。浣腸液は腸内に10分~15分とどめておく。

 

 私の経験ではコーヒーを10分~15分留めておくうちに液の中のカフェインは、ほとんど体に吸収される。そしてそれが肛門の静脈から門脈の静脈を経て肝臓に達する。

 

 患者にするコーヒー浣腸は腸の働きを良くする為だけではなく、肝臓の働きを良くする為のものだという事を認識してもらう必要がある。普通のブラックコーヒーを体温に温め、200㏄前後の量を注入する。

 

 毒素の多い時は1日に、何回も浣腸することによって腸内の毒素生産を押さえると共に、野菜果物のジュースを大量に飲ますことにより、善玉菌と悪玉菌のバランスを善玉菌有利にさせる食生活をする。

 

 ゲルソンはその経験から、信じ難いかも知れないが、酷い痛み、頭痛、ふさぎ、筋緊張などの症状が浣腸をすることによって、鎮痛剤などが全く不要になる、といっている。これが本当かどうかは分からないが、ゲルソンは自分の体験から言っているのだ。

 

 末期癌の痛みの酷い急性症状の場合は、緊急性を要する。その時に当たって野菜果物のジュースとコーヒー浣腸または、ひまし油で難局を乗り越えている。

ゲルソンの偉い所は医者でありながら、自然の療法を取り入れている点にある。

 

 私がこの難局を処理した訳ではないので、この療法に対して全面的に推奨することは出来ないが、多くの末期癌患者を実際に扱ってきたゲルソンの方法が何かの参考になればと思いここで紹介した次第である。