食べ物の消化と吸収

 伊豆ふる里村に研修旅行に出かけた。断食をはじめ難病に苦しむ患者さんの為、食養道場を開いている。そこで最初に教わった基本的なことは、玄米飯を1口食べるごとに100回噛むことであった。

 

 よく噛んで食べる事は大切で50回は噛みなさいとは、多くの文献で見かけるが、100回噛むというのは異常に多い。1口入れる度に箸を置いて黙々と噛んでいる。ドロドロになるのを通り越してスープ状になる。

 

 これだけ噛むと、胃の中に入っても消化はスムーズに行くだろう。その上、食事中はお茶を飲むことは厳禁となっている。唾液だけで噛み砕くことを目的にしている。お茶で流し込むようなことは決してしない。

 

 食事の全体量としては、腹8分くらいになる量であろうか。少な目であるが、1口100回も噛んで食べているから、食事時間がすごく長い。その為か、少なめの食事でも物足りなさはない。

 

 お茶は食後30分過ぎてから初めて1杯のお茶が出る。あくまでも胃の中にある食物が消化されるまでは、お茶を飲まないという徹底ぶりだ。それほど、消化に気を使い、胃腸に優しい食生活が主体となっている。

 

 食べ物は、玄米に小豆を混ぜたごはんと、糠づけ、沢庵、野菜のお浸し、味噌汁、小魚(アジの開き)、梅干し1個、海藻の煮物(ひじき)、根菜類の煮物。基本的にはこのような食事内容で中身が毎回少しずつ変化していた。

 

 すべて自家製の無農薬野菜で、糠づけ、沢庵、味噌、梅干し、なども自家製の手造りで、昔の農家で食べていた食事を思い出させる内容だ。しかし、これが一番素晴らしい食生活と言える。

 

 当院で作っている脉診による食品優劣ランク表の選定をさせてもらったところ、すべての食品が優秀食品の所にランクされていた。その上、100回噛んでから飲み込む、胃腸にとってこれほど良い食べ物はない。

 

 糠漬け、沢庵、味噌汁、梅干し、などの手造り発酵食品は、菌が生きているから生きたまま大腸まで届き、善玉菌の活性化に大いに貢献する。善玉菌が増えると、アレルギー性の疾患に強くなる。

 

山の中で周りは杉の大木がうっそうと茂っている。春になると頭の上が黄色くなるほどのスギ花粉が降ってくるが、アレルギー性鼻炎になる人は一人も居ない。村人はアレルギー性鼻炎を知らない人がいるくらいだ。

 

日が沈んだら家に帰って休み、朝は早く起きて農作業をする。結構、身体を使う作業が多く、スタッフの方は皆さん筋力が強く、労働にもあまり疲れないようでよく働く。

 

 このような食生活がなぜ良いのか? 口の中には唾液が出てアミラーゼという消化酵素と咀嚼で、硬い食物を分解している、胃の中では胃酸という強酸性の液体が出て食品の殺菌、タンパク質、デンプン質の分解を胃の蠕動運動と共に行っている。

 

 十二指腸に送られてきた食物は、胆汁によって脂肪分を分解する。そこへ膵臓から膵液が分泌され、炭水化物、タンパク質、脂質を分解する。さらに小腸に入ると、腸液が分泌され、小腸の蠕動運動と共に炭水化物、タンパク質、脂質が最終的に分解され、栄養素として吸収される。

 

 大腸の中に送られてくると、水分が吸収され、食物繊維が善玉菌の餌となって分解する。その過程でビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンKを合成し吸収する。免疫細胞も小腸、大腸で70%は出来る。残りかすは便となって排出される。

 

 消化、吸収、の作用を上記のように細かく記述したが、実はこの100倍も精密な作用が働いている。すべての臓器、血液、リンパ液、神経、交感神経、副交感神経、体液、脳、生体電流、などが密接に連携してチームを組み、すべての食べたものをその日の内に消化、吸収してしまう。

 

 人間が暴飲、暴食、過食、間食、食品添加物、農薬、化学薬品、酸化した油、など体に害になるものを食べても文句ひとつ言わずに黙々と毎日の作業を真面目にこなしている。

 

 それはお腹の中で、私たちの全く分からない間に行われている作業である。この有難い、消化、吸収、器官に支えられて私達は生かされている。健康な生活を送る為に、私達は消化器官に対してどの様な配慮をすればよいのか、それを考える必要がある。

 

 超精密な消化器官は、免疫活動、PHの調整、解毒作用、基礎代謝の維持、血圧の安定、体温の維持などなど、たくさんの生命活動を行って、私たちの生命を安定的に保持してくれる。それに対して私達には限られた対策しかすることは出来ない。

 

 私たちに出来る事、

 

   食事の時に1口ごとに100回噛む。

   少食を心がける。

   食品優劣ランク表にある優秀食品を食べる。

   ランク表下位にあるものは、なるべく食べない。

   毎日必ず運動をする。

   睡眠時間は必ず7~8時間は取る。

 

 最低でも上記、6項目を真面目にやると、健康な生活を送れるようになること間違いないだろう、ぜひやって頂きたい。