末期ガンには放置療法

  中村医師は、他の病院から60歳の時、同和園に移って来ました。そこでは高齢者が末期癌になった場合、家族の申し出により、医療はすべて受けない、放置療法を希望する家族が多くいました。老齢でありその申し出も、もっともだと思い希望どおりにしました。

 

 そこで放置療法の驚くべき実態が分かってきたといいます。まず放置療法をすると末期癌であっても、全く生活の質が落ちない、普通の生活で過ごせるという事実でした。又、最期になっても痛みが全くなく、安らかな最期でありました。

 

 中村医師は以前勤めていた病院で癌患者さんには化学療法で対処していました。その時は末期になるとすべての癌患者さんが猛烈な痛みを訴えていましたので、モルヒネなどの麻薬を処方していました。

 

 ところが同和園に来てから、すでに10名近くの末期癌患者さんすべてが、最期の時になっても痛みを全く訴えないのです。これは何かあると気付いた中村医師は、その後も10年近く観察してみると、その間72名の末期癌患者さん全員が生活の質を落とさないで、最期は痛みもなく安らかに逝ったのです。

 

 このことから癌の痛みというのは、手術、抗癌剤、放射線、などの治療により身体に悪い影響を与える方法が原因で、痛みが出ている可能性があるのではないかと推理したと言います。

 

 詳しく知りたい方は,「大往生したけりゃ医療と係るな」中村仁一著    

(幻冬舎新書)を読んでみてください。

 

 老齢で末期癌の場合は、先進医療を受けても、6カ月から3年の命です。

ただ、先進医療を受けた場合は、生活の質は極端に落ちます。吐き気、食欲不振、脱毛、不眠、だるさ、など多くの障害が起きてきます。その上、痛みが酷く、モルヒネなどの麻薬が必要となります。

 

 放置療法でも余命は、同じく6カ月から3年と言われています。大きなちがいは、放置療法の場合、生活の質は健康な時と同じで、普通においしい物を食べ、愉快に過ごせるところです。又、最期も痛みなど全くなく安らかに逝くことが出来ます。

 

 放置療法に加え、食生活の改善などに積極的に取り組むと、3年から8年に命が伸びます。もちろん生活の質は元気な時と全く変わらず、最期になっても全く痛みもせずに安らかに逝くことが出来ます。

 

 75歳を過ぎたお年寄りが末期癌と宣告された場合、自分の死を意識すると思います。その場合、死を否定してあくまでも癌と戦うか、それとも死ぬまでの生き方を考えるか、によって大きく人生が変わります。

 

 どちらにするかは、それぞれの考え方によります。私の考え方としては、手術、術後抗癌剤の使用、などにより、お年寄りの身体にかかる負担を考える時、放置療法の方が断然有利だと考えるわけです。

 

 75歳以上になると体力は若い頃の3分の1に低下しています。その為、癌になる確率は飛躍的に高くなります。これは体そのものが酸性に傾き(錆びついてきている)癌発生の土壌になっている為です。この身体に化学治療を施すと、ますます酸性体質になり、ほとんど完治の見込みはありません。

 

 放置療法と共に生活改善で、人生の予後を愉快に過ごすと共に、生活の質を落とさない元気な老後を送っていただきたいと思っています。生活の改善に取り組めば結構、長生きする可能性も出てきます。

 

 がん末期に、激しい痛みが襲ってくるのは、人間の持っている自然な力を、無駄な医療が邪魔しているから起きるものです。ほんとうの「自然な最期」は驚くほど安らかなものであり、人間は何もしないと安らかに死んでゆける力が備わっています。