癌病棟の真実 土屋病院外科部長 土屋繁裕著より
癌外科医の中には、まるで辻斬りのように、出会った患者さんを切り捨てていく医者がいます。治る見込みのない患者さんまで切られ、患者さんは肉体的、精神的損害を被るだけで何の得もない。そんな手術が少なくありません。
現場の医師として長年、この事実に接し続けているうちに、現在の手術絶対主義の癌外科医のあり方はおかしいのではないか、と強く感じ始めました。
数年前から手術だけを奨励するのではなく、場合によっては手術をしない方針で行く方が、かえって患者さんのメリットは大きくなるのではないかという思いが募って来たのです。
手術をしなくても良い患者さんまで切る。この背景には、癌外科医たちの患者さん不在の治療があります。ただ興味本位で患者さんのお腹を開いてみたり、患者さんの術後の生活や苦しみなど全く顧みない。
まるでコンベアで流れてきた商品を扱うように切る外科医がいたり、患者さんをモルモット代わりにする。 医者という前に人間として許せない医者がいることに怒りを禁じえませんでした。
次に紹介するのは、ある癌センターの医師の話です。
私は10年以上この病院で患者さんの治療を行ってきました。
初めは希望に燃えて入って来た医療現場
しかし、途中から自分がやっている治療に矛盾を感じ、どんどん罪悪感を感じるようになって来ました。自分は人の命を救うためにやっているはずである。それなのに、治らないと分かっている患者さんに、抗がん剤を投与するしかできない。
かえって患者を苦しめる治療をやらざるを得ない。本当に自分は患者を救うために最善と思える治療が出来ていないのです。それは病院内での周囲の圧力があるからです。本当にこれが人の命を救う医師のすべきことなのだろうか?
今は、絶望感があるだけです。