ある日、新患さんで非常に困っている患者さんが来院してきた。女性、56歳、A子さんは、3か月前に歯が痛くなり、歯医者に行って治療をお願いした。ところが歯の痛みが何処から来ているのか歯医者さんではさっぱり分からない。
ただ痛み止めを処方するだけであった。仕方がないので、大きな病院に行って診察してもらった。色々検査をした挙句、何処も異常がない。この歯の痛みは歯から脳に通っている神経が痛むのだからと言って、また痛み止めをくれた。
痛み止めを飲んでいる内に、食欲不振、舌の荒れ、胃のむかつき、神経が過敏になり眠れない、など次々と別の病気が出てきた。その都度、その症状に合わせた薬が処方され薬がだんだん増えてくる。
心臓の動悸が度々起こり、睡眠薬を飲んでも神経が過敏になって眠れず、歯の痛みは相変わらず続いている。その為さらに睡眠が阻害され、今は身体がフラフラで自分の身体でないような感じになっている。
こんな状態で鍼灸院に飛び込んできた。先生、元の自分の身体に戻りたいのですが出来ますでしょうか? 大丈夫ですよ、完全なもとの身体に戻してあげます。心配しないで任せてください。
まず、今日から薬は一切飲まないようにしてください。少し不安かもしれませんが、まず薬を断ち切ることが一番肝心です。薬の副作用が重なって今の症状が出ているのですから、薬は完全に辞めてください。
先生、いきなりすべての薬を辞めても大丈夫ですか? 大丈夫、薬を辞めたぐらいで死ぬこともありません。何日か、多少つらい時期もあるかもしれませんが、それを乗り切ってください。
何日か経つと、自分の中にある自然治癒力が回復してきて、すべての症状は回復する方向に向かっていきます。自分の身体を信じて任せてみてください。すべての動物は病気になると何も食べずに、水だけ飲んで、じっと時が経つのを待っていたのです。そのうち自然治癒力が働いて治ってゆくのです。
ただ、普門堂鍼灸院では、治療をします。まず歯の痛みですが、歯というのは骨ですから、腎臓の系統が弱っているのです。そこで腎臓を強める穴に、知熱灸をします。腎臓が強くなると骨がしっかりしてきます。当然、歯も骨ですから、歯茎がしっかりしてくると、痛みも無くなってくるのです。
つぎに、神経が過敏になって眠れない症状ですが、これも過敏になっている神経の過敏状態を鎮める鍼をします。之によって歯の痛みと、不眠症が改善すると睡眠が充分とれる状態になります。
人間、充分な睡眠がとれるようになると、自然治癒力が改善されてきて、すべての症状が良い方向に向かって動き出します。人間はそんなに弱い物ではありません。生命力のある限り元気で生きられるのです。
薬にやられて、薬が薬を呼び、身体がメチャクチャになる患者さんが、時々います。特にお年寄りの場合は、病院に摑まってしまい、そこから抜け出すことも出来ない状態になる場合もあります。
薬が効かない時には思い切って、薬をすべてやめる勇気も必要です。自分の体の中にある自然治癒力に任せてください。薬だって自然治癒力を助けるだけの物です。それが間違った薬を出されるから、自然治癒力を阻害して悪い方向に進んでしまうのです。
この患者さん薬を辞めて、鍼灸治療をすることによって、3回の治療で全快してしまった。あれだけ薬を飲んで、お医者さんに通って、何カ月も苦しんでいたのに、こんなに早く治るなんて、薬は本当に怖いものですね。しみじみと言っていた。
【薬の発明はこの世で最大の悲劇である】
ジョエル ファ-マン博士の言っている言葉です。アメリカではナンバー1のファミリードクターとしてよく知られた存在で、薬は体にとって異物であり、毒でもあるということを主張している学者です。
薬を飲むということは、身体のどこかに不調があるということです。にもかかわらず、薬を飲んでその不調が改善されたら、それでOKとしていませんか。
「不調があったことを忘れてしまったり、忘れないまでも、また同じ不調が現れたら、薬を飲めばいい」と思っていませんか?
薬があることで「不調は、なぜ起きているのか」の根本原因について考えることを無意識のうちにしなくなり、なくす努力を忘れ、そのまま放置してしまい、結果、世の中には相も変わらず慢性病がはびこり、苦しんで亡くなる人が後を絶ちません。
薬の大半は「無くていい物」「ないほうがいい物」「あってはならないもの」と言っても過言ではありません。「薬があるから大丈夫」は健康的な生活を脅かす悪の呪文なのです。
もちろん、先天性の病気や急性の症状など、薬のおかげで助かる命、薬を飲むべき時もあります。厚生労働省のホームページで次のようなことが書かれていました。【1に運動、2に食事、3にしっかり禁煙、4に薬】これは何を意味しているのでしょうか。
薬を管轄している厚生労働省では、薬は毒ですよと言うことはできません。その代り生活習慣を正せば、薬を飲まなくても病気にはかからない身体になるのですよ、ということを言いたかったのです。
ただし伝染病やケガ、不慮の事故、過労,精神的な疲労、熱さ、寒さ、湿度、乾燥、などにより緊急に薬を必要とする事態もあります。
薬やお医者さんは、この為にあるのです。自分のやるべきこともやらずに、すぐに薬に逃げ込む、ここに【薬の発明はこの世の最大の悲劇】となったのです。